研究概要 |
2005年度は7月にロシア・カムチャッカ半島の西岸のマーラヤ湖等で,8月にはモンゴル・フブスグル湖周辺内湖で現地調査を,12月には中国雲南省のエルハイ湖での予備調査等を行った.個々の湖沼では沈水植物を中心に植生調査を行うとともに,現存量調査,底生動物相の調査等を行うとともに,ほ乳類や水鳥の調査をも行った. フブスグル湖周辺内湖や,マーラヤ湖での植生調査と日水温の連続観測から,高緯度地域での湖沼の水草種の多様性が,夏期の水温上昇と関係があると考えられた.また,マーラヤ湖における水草の現存量を計量した結果,各湿地における水鳥の水草の利用の仕方は多様であるが,その資源量が,水鳥の飛来に影響を与えている可能性が示唆された. リュウノヒゲモについて,上記湖沼の他,日本国内13箇所で遺伝解析用サンプルを収集した.遺伝分析手法については,公表されているマイクロサテライトマーカーのうち,PP24,PP37,PP39,PP40,PP32,PP34,PP42の7遺伝子座で,PCR増幅,明瞭なピークパターン,多型が得られ,解析可能であることを確認し,PCR条件を確定した.DNA抽出を全て終了し,集団解析を進めた結果,人為復元された和歌山県集団は単一クローンであったのに対し,阿寒湖集団はクローン多様性が高いなど,人為的管理下の集団でクローン多様性が低い傾向が示唆された. 外来種のコカナダモについて,平成4-14年度の『河川水辺の国勢調査』より,国内各河川での経年出現情報をまとめるとともに,夏季におけるコカナダモの成長実験を行った.実験の結果,一般的にコカナダモは側茎を多く分枝して横方向への伸長を示すという特徴が明らかになった.このことより,水深の深い湖沼よりも元来浅瀬での生育に適していることが推察され,河川や水路などにおいて繁茂しやすい形態であることが推察された. 底生動物については,本年度は,ロシア国カムチャッカ半島の複数の湿地において調査を行い,昨年度実施したモンゴル国フブスグル湖およびツァガンノール湿地および琵琶湖,北海道など日本の湿地における底生動物相との比較を行つた. 鳥類については,現地調査とともに,東アジアにおける水鳥のフライウェイを把握する上での課題,および琵琶湖とその周辺湿地に生息する水鳥と生息環境との関係を整理した. 動物相についてフブスグル湖周辺の湖辺,草原および林内においてセンサーカメラによる調査を行った.水鳥との接触機会が多いのは野生動物よりもウシやウマなどの家畜であった.撮影された野生哺乳類ではナキウサギ類とリス類が際だって多かった.日本の山地哺乳類相と比較すると中型哺乳類の撮影頻度が少なかった.フブスグル湖には湖岸を特徴づける哺乳類相は存在せず,水際の哺乳類相は貧弱であった.
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