研究課題
基盤研究(A)
本研究では、地域変異を示すチンパンジーの行動が、文化的行動なのか個体学習によるのか、文化的行動であるなら、それはどんな発達過程や伝播経路を経て獲得するのか、また新奇な行動がどのくらい集団の文化として定着するのかを調べている。タンザニアのマハレ国立公園のM集団が特異的に示す「オオアリ釣り」や「対角毛づくろい」などの行動について観察した。60個体のうち、オオアリ釣りをしなかった個体は、6歳の1個体を除くとすべて3歳未満だった。この行動は、発育に応じて社会的に獲得されることが示唆された。「対角毛づくろい」は、5歳以下の個体はほとんどしない。対角毛づくろいの相手は、発育に従って、まず母親、次に複数のオトナメス、さらに年長のオスへと拡張していく。性的成熟に達する9歳頃に年長のオスと対角毛づくろいを開始する。新奇行動のうち、「地面グルーミング」、葉で口を拭う「口拭き行動」、水流での「スポンジ使用」、メス同士の「性皮こすり行動」などを示す個体が次第に増えている。一方、威嚇行動としての「腹叩き」、赤ん坊の「首銜え運搬」、子が口で毛づくろいしたあと、その子の口に母がキスする行動などは、現在のところ、ほぼ1個体に限られる。今後、これらの行動が伝播するかどうか追跡する必要がある。チンパンジーは乱交するので、DNAサンプルを採集して父性解析を行い、行動の伝播に血縁が及ぼす影響を調べている。正確な地図を作るため、集団遊動域をGPSによって測量した。また、採食条件の季節変化が繁殖成績に及ぼす影響を調べた。さらに、生殖関連ホルモン濃度の測定や健康モニタリングのため、チンパンジーの尿や糞を採集した。チンパンジーに関連する吸血性アブ類とサシバエ類を捕獲し、乾燥標本とした。尿標本112個、糞標本139個、ビデオ映像200時間、写真フィルム191本、野帳79冊、昆虫標本300点以上を収集した。
すべて 2005 2004
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