研究概要 |
1.背景・目的:新型インフルエンザ発生候補地の中国と国境を接するベトナムにおけるインフルエンザを含むウイルス性急性気道感染症(ARI)の疫学的研究が目的である。2003年にインフルエンザA/H5N1流行がベトナムから始まり、国家をあげての活動により2005年11月から発生が止まっているが再発生が危惧される。更には、インフルエンザのアマンタジン耐性株発生状況も検討する。 2.方法:ハノイ、ハイランドにおけるARI患者が調査対象である。初診時に咽頭拭い液を採取し、ハノイのNIHE(国立公衆疫学研究所)においてウイルス分離、同定、更にはRT-PCR法によっても同定を試み、陽性株をcDNAにした後でアマンタジン耐性株の有無を新潟大学で検討した。また、サーベイランス強化として国内主要研究所の医師、技師へのウイルス分離、PCR法などの技術修練も行った。 3.結果・考察:2001年から2005年にハノイ市のARI患者検体からA型、B型インフルエンザを検出し、特にA/H1N1,A/H3N2の来院時検体からアマンタジン耐性株の有無を検討した。耐性株は2002年から毎年見られ、A/H1N1は2002年の1例のみ、A/H3N2は2004年の2.9%が2005年には30.8%と急増した。2005-06年シーズンには日本各地、米国、香港と同様にA/H3N2耐性株がハノイ、ホーチミンで検出され、この株はヘマグルチニン(HA)遺伝子に二重変異(193位、225位)を持つ特異的性質を有すること事が確認され、更なる発生機序と最初の国・地域の特定化を含むグローバルな対策の必要性が本調査から始めて示唆された。今後、抗インフルエンザ剤耐性株に対して本当に臨床的に薬剤が無効であるのか今後の多数の症例からの解析が待たれる。 ベトナムでのインフルエンザサーベイランス強化に向けて、ハノイ、ホーチミンの研究所からの3名の技師にウイルス分離、PCR法などの技術修練と持参した同定不能の検体への精査法を指導した。疫学的解析に向け、地図情報システム(GIS)を導入すべく調査を行い、今後の可能性が示唆された。
|