研究分担者 |
草川 茂 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (10267990)
椎野 禎一郎 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (90291129)
塩田 達雄 大阪大学, 医学部・微生物病研究所・免疫・生体防御研究部, 教授 (00187329)
岡 慎一 国立国際医療センター, エイズ治療・研究開発センター, 部長 (20194326)
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研究概要 |
アジアをフィールドとしたエイズ流行およびその背景にある宿主要因に関する分子疫学に関する研究を進め、その結果次のことを明らかにした。 1)中国における流行の成立ちに関する総括的分析: 中国におけるエイズ流行のエピセンターと考えられる雲南省西部地域に分布するウイルス株の解析の結果に基づき、分子疫学的視座から中国流行の形成の系譜(genesis)に関して、次の作業仮説を提出した。「90年代初頭までに存在したと類推されるサブタイプB,B',Cの3種のウイルス株のうち、サブタイプBの流行はabortし、一方サブタイプCはB'との間の新しい組換えウイルスを生み出した。しかし母体となった純粋なサブタイプCはほとんどすべて中国から失われ、現在残るのは、ほとんどサブタイプB'とのBC組換え体となっている。またサブタイプB'はIDUの他、中国内陸部におけるプラズマ供血者におけるアウトブレークの極めて強力なファウンダー株となっている。」 2)CRF07_BCとCRF01_AE間の新しいタイプの第2世代組換えウイルス(inter-CRF recombinant)の同定: ミャンマーで見い出された約50株のURFの中に、中国に由来するCRF07_BCとタイに起源をもつCRF01_AE間の新規組換えウイルスを3名のSTD患者から同定した。これはCRF間の第2世代の組換えウイルス(inter-CRF recombinant, ICR)としては、先にわれわれが中国で発見したCRF07_BCとCRF08_BC間の組換えウイルス(ICR_0708)に次ぐ第2のもの(ICR_0701)である。また同一構造をもつ組換えウイルスが疫学的に関連性のない3症例から同定されることから、我が国研究機関から発信される最初のCRF例となる可能性が期待される。(武部・草川・椎野班員) 3)宿主因子に関する解析: アジアにおける重要な遺伝子多型であるCCR264Iによる発症遅延機序がCCR5の崩壊促進によるという新知見を得た(塩田班員)。また遺伝子多型薬剤(efavirenz,EFV)血中濃度を上昇させ、皮疹等の副作用を増強する遺伝子多型CYP2B6 ^*6(Q172H and K262R)を見い出した(岡班員)。
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