研究課題
アジアをフィールドとしたエイズ流行およびその背景にある宿主要因に関する分子疫学に関する研究を海外の共同研究者と進め、本年度、次のことを明らかにした。1)アジアにおける組み換えウイルス新生地点におけるHIV-1重感染に関する解析:これまでの研究の結果、中国雲南省および隣接するミャンマーにおいて組換えウイルスの新生地点を同定したが、組換えウイルス発生の前提として、異なる系統のウイルス株が同一個体に重感染するステップのあることが推測される。そこで、われわれは、これら地域において、HIV-1重感染の頻度とその特徴について解析した。その結果、重感染例を4-8%の頻度で検出し、特にミャンマーの注射薬物乱用者(IDU)では組換え体を含む、多様なウイルス種が重感染している例が多く見られることを示した。組換えウイルスはこのような重感染状態から生み出されるものと考えられる。2)マレーシアに出現した新型の組換え型流行株の発見:マレーシアは近年流行の急速な拡大が見られるアジア諸国の一つであるが、この地域の流行拡大に関与すると推測される新型の組換え型流行株(CRF33_01B)を見い出した。CRF33_01Bはタイに起源をもつCRF01_AEとサブタイプB株の間の組換えウイルスで、感染者の全体の19%を占める。とりわけIDUで感染率(42%)が高いことから、CRF33_01BはIDU集団にはじめて出現し、その後、性感染ルートによって次第に一般集団に拡がりつつあることを明かにした。3)宿主因子に関する解析:CRF01_AEに感染したタイ人感染者の中で早期発症者と発症遅延者の2群を比較することで、エイズ発症速度に影響を及ぼす宿主遺伝子多型の解析を行い、CCR2 64I,SDF-1 3'A,IL4-589Tの3つのalleleが、統計学的有意性は低いが、エイズ発症に対して防御的に働くことを示した(塩田班員)。
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