本研究は、クラスタコンピュータの性能の飛躍的な向上を目指して、PC本体と協調しつつ並列分散処理を自律的に支援する機能を持つネットワークシステムの開発を行っている。また、並列プログラムからネットワークが自律的に通信処理を実行する際に必要となる情報を抽出するコンパイラの開発、および応用プログラムを用いた詳細な性能評価、を目的としている。 本年度は、ネットワークインターフェイスとスイッチ上に実装するリンクレイヤプロトコルの設計と実装を行った。本プロトコルでは、物理レイヤにおける調停回数を極力削減すべく、バースト転送を可能な限り継続できるようなcontinuous network burst転送機能を開発し、実装している。また、ホストコンピュータとネットワークインターフェイス間でハードウェアリソースを低オーバヘッドで共有できる排他制御方式を開発した。これらの開発とともに、ハードウェアデバッグや性能評価を行うためのソフトウェアツールも開発した。また、高性能メッセージ通信APIとして、MMPと呼ぶメッセージ通信ライブラリを開発し、性能評価を行った。さらに、MPICHをベースとしてMPI通信ライブラリを開発し、アプリケーションを用いて検証した。 ソフトウェアシステムの研究としては、共有メモリ型並列プログラムから、クラスタコンピュータで実行可能なメッセージ通信型の並列プログラムへ変換するコンパイラの開発を行った。本コンパイラによって生成されたプログラムの実行時の様子を詳細に測定し、考察した。さらに、実際にクラスタ上で実行し、予備的な性能評価を行った。最適化の余地はまだ残されているものの、良好な結果が得られることを確認した。以上の本年度の成果は、3編の国際会議論文として発表した。
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