研究概要 |
本研究では、誰にでも使いやすい入力インタフェースの実現を目指し、使用前のキャリブレーション作業を不要にしつつ注視点位置を安定して計測する手法を明らかにすることを目的としている. まず安定して眼球画像を撮影するため、超小型CCDカメラをゴーグルに取り付けた光学系を製作した.これを被験者に装着させ、眼球の強膜輪郭を抽出し、その重心を計測する画像処理プログラムを作成した.さらに比較のため、頭部から距離をおいて据え置きしたビデオカメラにより眼球画像を撮影できるようにし、同様のプログラムにて強膜領域の重心を計測し、計測分解能の比較を行った.比較実験では、被験者前面に注視領域を設け、その中に指示した点を注視した際の計測結果の分散と、設けた注視領域の大きさの比率から、実際の分解能を求めている. ゴーグルに取り付けたCCDカメラからの画像処理では、水平方向45×垂直方向37の分解能を得られた,一方、遠距離からの固定カメラの画像処理では、16×15と分解能が低くなった.これは頭部全体の細かな運動が影響した要素が大きいと考え、被験者顔面に小さなシールを貼り、この位置を合わせて追跡することで頭部運動成分をキャンセルする補正処理を加えたところ、26×19と分解能が向上したが、それでもゴーグル取り付けCCDカメラによる分解能には及ばなかった. 以上より、眼球画像の安定した撮影については、超小型CCDカメラをゴーグルなどを用いてユーザ頭部に直接取り付け、可能な限り近くから撮影する方式が優れていることが分かった.更に、注視する点を表示させるディスプレイの、眼球表面での反射像も撮影できることが確認できた. 実験のため作成したプログラムでは、画像処理に単純な二値化を用いたが、周囲光の影響が大きく現れた.安定した注視点計測の実用化には、この影響を除く処理も必要であることが確認された.
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