研究概要 |
本研究は、高齢者やベッド上生活者など、誰にも使いやすい入力インタフェースの実現を目指し、使用前のキャリブレーションを簡略化しつつ、注視点位置を安定して計測する手法を明らかにすることが目的である. 今年度は、ターゲットとなるLED光源を複数用いて、キャリブレーション簡略化の手法を研究した.代表的な注視点計測手法である角膜反射法では、単一のLED光源を用い、角膜表面で反射したプルキニエ像の、瞳孔領域に対する相対的な位置が、眼球方向と比例することを利用している.ただし、ここで得られる値は、4〜9点でのキャリブレーションに基づいて実際の注視点位置に対応づける必要がある. そこで、一つの光源に関して「注視しているかいないか」のみを判断させ、処理を簡略化することとした.そして、注視点の候補となる複数箇所のそれぞれに光源を設置し、これを順次点灯させ、個々の判断結果を比較することで、最終的にどの光源を注視しているかを求めることとした.これにより、キャリブレーションを簡略化しっっ、実空間内の複数箇所を選択可能な注視入力インタフェースが実現できると考えた. 使用者頭部に装着したゴーグルに、超小型CCDカメラを取り付け、眼球画像を撮影し処理するシステムを開発し、本手法を検証した,問題となる周囲の照明による影響は、CCDカメラには赤外光透過フィルタを付加し、対応する波長の赤外光LEDをターゲットとして利用することで、ハードウェア的に対策し、さらに、ターゲット点灯時と消灯時の差分をとることで、ソフトウェア的にも低減を図った. 試用実験から、カメラ撮影方向によるずれを補正すれば、最高68.1%の正答率で注視点の判別が可能であった.本手法では1点のみのキャリブレーションで十分であり、入力操作に際して頭部を自由に動かせることから、皆に使いやすいインタフェースとして有効であると考えられる.
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