研究概要 |
本年度は映像酔いの実験を数種行なった.まず,松江事件の映像の手ぶれを低減させた映像を用意し,手ぶれのあるときとないときで映像視聴後での主観評価の変化,映像視聴中の瞳孔径変化,視聴中の視線位置分布標準偏差,眼球運動軌跡総延長を測定,比較した.この結果,視線位置分布標準偏差と主観評価の間に相関傾向が認められ,眼球運動と酔いの間の関係に関する仮説を裏付けるデータを得た.また,視覚誘発自己運動感覚(ベクション)と酔いの関係を,眼球運動および重心動揺を同時記録する事により解析した.一定の運動を続ける刺激を見続けると,自己運動感覚と対象物の運動が自発的に交互に見える.この運動のあいまいさと重心動揺・眼球運動ともにきれいに相関する事が判明した. またステレオ映像に関する実験では,輻輳性調節が焦点はずれ刺激による調節と矛盾する事が疲労の原因と考えられているが,焦点はずれによる調節が,輻輳性調節に打ち勝って主導権を握る様子を観察する事ができた.この件に関しては,静特性として,2006年2月に論文を出版する事ができたが,引き続き動特性の結果を論文とすべく執筆中である. カラーブレイクアップを生じるようなディスプレイでは,常に眼球が動いている眼振を有するものにおいて激しい疲労を誘発する事を定量的に解析できた.これについても論文を出版する事ができた. この他,今年度は,Displays誌に,映像と健康に関する5件の論文を投稿できたので,順次掲載されると期待している.
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