研究概要 |
本研究では,音声生成と音声知覚の密接な関係を示す一例として「聴覚フィードバック」を取り上げ,知覚・生成の相互作用の解明を図ることを目的としている. 3年目は,知覚と生成の相互作用についてのモデル化の糸口をつかむことを目標に,過去2年間行ってきたフィードバックの摂動量と補正量との関係を精査するために,筋電計測および発話音声の音響計測に加えて,舌運動の計測を行った.具体的には,以下の項目について研究を行った. レ 三次元磁気センサシステムによる調音器官の舌と下顎などの調音位置と調音運動の観測 レ 発話された音声の音響分析 レ 上記2方法における補償動作が観測される割合の考察 実験の結果,以下の結果を得た. 聴覚フィードバックに摂動を与えた場合,舌・口唇の位置情報の主成分分析結果から,摂動/u/に対しては,摂動を与えた際の補償動作を確認することが出来た.この補償動作は第1,第3主成分,すなわち,舌の上下前後の変化での動きが大きく,第2主成分,すなわち,口唇形状の変化についての動きが小さいことがわかった.摂動を与えた場合の発話音声の音響分析では,補償動作の割合が61.7%と昨年度の結果と同程度(60〜70%)であったが,磁気センサシステムからは,舌の下方かつ前方,下方のみ,前方のみのいずれかの補償動作が起こっている割合は約79.4%となり,音響分析に比べ高い割合で補償動作を確認できた. この結果,は音声を生成する際に聴覚系がモニタリングをしていることをより明確に示唆している.
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