研究概要 |
本年度は各制御機能の理論面での高度化と適用範囲の拡充,シミュレーションによる確認,実験によるデータの収集を行った. 1.転倒回復制御について 本年度は,不整路面での転倒回復動作を実現するため,転倒回復動作生成アルゴリズムの再構成,拡張を行い,シミュレータ上にて検証を行った.動作生成は,12種類の接触部位の組み合わせをノードとしたグラフを用いて行う.異なるノード問は,(1)接触部位の内の一つを地面から離す動作,(2)新たな接触部位を地面に着ける動作によって接続される.またそれぞれのノードは,(1)接触部位の内の一つの接触位置を変更する動作,(2)接触状態は維持しながら重心位置を変更する動作という自己回帰型の動作も持つ.初期状態及び目標状態を接触部位の組み合わせとそれぞれの位置によって定義し,動作の長さを評価指標としたA*探索をこのグラフを用いて行うことにより,動作の生成を可能とした.現在の実装では,各接触部位は安定して接触を維持できることを仮定しているが,実際には路面の凹凸の状況によって接触位置によっては接触が不安定になる場合が予想される。このような接触位置を検出し,適切な接触位置を探索する機能を統合することが今後の課題である. 2.柔軟転倒制御について 本年度は最適制御理論の導入を拡大し,ロボットの初期条件が変動する場合にも各々に応じた最適な転倒運動を選択的に利用可能とする方法を開発した。これは,ロボットの倒れこみ時の初期条件を多様に想定し,それぞれについて最適な転倒運動をあらかじめ生成することで,最適転倒パターンを網羅的に生成する手法である.また,腕とひざなど複数の部位を用いた連続的な転倒動作にも対応し,ヒューマノイドロボットが前方へ転倒する際の多様なケースに対応可能とした.また,昨年度までに作成した実験用等身大ヒューマノイドロボットHRP-2FXの衝撃計測能力を拡充し,転倒時の利奇跡を直接計測することでより精度の高い評価が可能となった.これらの要素を用いた実験によって,ロボットは初期状態が一定ではない前方への安全な店頭を実現し,その際の着地衝撃は目標としていた安全条件である15Gを広い範囲で満たすことができることを確認した.今後は転倒方向を間わない幅広い条件での安全な転倒を実現してゆくことが必要である.
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