研究課題/領域番号 |
16300084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (70237139)
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研究分担者 |
上野 吉一 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40261359)
田中 正之 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80280775)
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キーワード | 動的表象 / 比較認知科学 / 比較認知発達 / 運動知覚 / 動画知覚 / 認識 / チンパンジー / ニホンザル / ヒト |
研究概要 |
近年、認知心理学研究のさまざまな領域においてクローズアップされている動的表象(Dynamic mental representations)の問題について、チンパンジー、マカクザル、フサオマキザル、ヒト成人、ヒト乳児、など各種霊長類を対象に、動的表象の形成の系統発生的基盤とその適応的意義を探るため、比較認知科学および比較認知発達の視点から検討を行った。本年度の成果は以下のとおりである。 (1)運動知覚・動画知覚/認識の基礎訓練:運動知覚・動画認識の研究を進めるために、ニホンザルおよびチンパンジーに静止画や動画を見るよう現在訓練を進めている。また、チンパンジーでは今後の各種課題への予備訓練として、複数物体のうち運動したものを選択する訓練を行った。 (2)運動方向判断における「前進」バイアス:ヒトでは、左右どちらにも動いたように見える2フレームの仮現運動事象に対して、提示された物体が方向性(たとえば顔の向きなど)を有する場合、物体が前進するように運動方向を判断するバイアスが存在する。このような知覚的運動判断におよぼす「知識」などのトップダウンからの影響についてチンパンジー幼児個体を対象に実験を進めている。その結果、ヒトでは前進方向バイアスが生じる三角形などの幾何図形を用いた場合、チンパンジーではバイアスは認められず、彼らにとって方向性に意味のあるチンパンジーの全身像や頭部を提示した場合には明瞭な前進バイアスが認められた。今後は、このバイアスの規定因を探るための実験を進める予定である。 (3)動的なキャストシャドーの物体認識におよぼす影響:ヒトの乳児および成人を対象に運動するキャストシャドーの付加による物体形状の認識や物体の運動方向の弁別について乳児では馴化-脱馴化法、成人では視覚探索課題を用いて検討を行っている。 (4)運動からの意図性の検出:チンパンジーに対して、2つの幾何学図形が、一方が他方を追いかけるように動く場合と、ランダムに動く場合の2種類を提示して、運動からの物体の「意図性」の検出について検討している。
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