研究課題
基盤研究(B)
生物進化のほとんどの問題の出発点は、まず系統関係を明らかにすることである。分子生物学の進歩に伴い、信頼できる系統樹推定はDNAや蛋白質の配列データによるものであるというコンセンサスが得られてきた。しかしながら分子系統樹推定は、当初考えられたほど簡単なものではないことが明らかになってきた。その理由は、系統樹推定は仮定した素過程、つまり塩基やアミノ酸の置換モデルに依存し、これに関するわれわれの知識は未だに万全だとは言えないからである。本研究では、より現実に即した置換モデルを構築すると共に、生物系統学の実際問題の解決をはかることを通じて分子系統樹推定法の改良を目指してきた。これまでは世界に先駆けて、アミノ酸配列データから系統樹推定するための最尤法に基づく系統樹推定法を開発してきたが、今年度は、同義置換のもつ系統関係に関する情報も最大限に生かした解析を行うために、コドン置換モデルに基づいた塩基配列データの解析法の検討を行った。このモデルは、Yang, Nielsen and Hasegawa (1999)によって定式化されたていたが、今年度は東京工業大学の岡田典弘研究室で得られたハクジラ全種のミトコンドリア・ゲノムデータに適用し、従来の方法に比べていくつかの点でよりはっきりした系統関係が得られることが示された(Sasaki et al.,印刷中)。またカワイルカ進化の歴史を明らかにするために、ヨウスコウカワイルカのミトコンドリア・ゲノム配列を解読し、そのデータを含めてハクジラの系統解析するにあたって様々な系統樹推定法を比較検討した(Cao et al.,投稿準備中)。更に、真核生物の系統樹の根元がどこにあるかを明らかにするため、多数の遺伝子の最尤法による系統樹解析を統合することによって、これまでよりの信頼性の高い系統樹を得た(Arisue et al.,2004)。
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