研究概要 |
ポストゲノム時代に入り、大量のDNA塩基配列データが生産されるようになってきたが、大量のデータが得られたからといって、必ずしも生物系統学の問題が直ちに解決するというわけではない。データが大量になるに従って、分子系統樹推定法の偏りのために、間違った系統樹がむしろ強く支持されてしまうということがしばしば起るからである。今年度はさまざまな生物系統学の問題に取り組みつつ、分子系統樹推定法の問題点を明らかにすることにつとめた。 当研究室では世界に先駆けて、アミノ酸配列データから系統樹推定するための最尤法に基づく系統樹推定法を開発してきたが、昨年度に引き続き今年度も、同義置換のもつ系統関係に関する情報も最大限に生かした解析を行うために、コドン置換モデルに基づいた塩基配列データの解析法の検討を行った。このモデルは、Yang, Nielsen and Hasegawa (1999)によって定式化されていたが、ヒゲクジラ類(Sasaki et al.,System.Biol.(2005)および投稿中)、カワイルカをはじめとしたハクジラ類(Cao et al.,投稿準備中)、有袋類(Munemasa et al.,投稿中)、食肉類(Yonezawa et al.,投稿準備中)、両生類マダガスカルガエル科(Kurabayashi et al.,印刷中)、軟体動物門頭足綱二鰓類(Akasaki et al.,印刷中)、鳥類(Watanabe et al.,投稿中)などのミトコンドリアのゲノムデータに適用し、従来の方法に比べていくつかの点でよりはっきりした系統関係が得られることが示した。 これらの成果に基づき、最尤法による分子系統樹推定プログラムMOLPHYの改訂版を整備した。
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