本年度は、新しい方法論を検討する開始年度であると同時に、これまで提案されてきた方法論を整理し、それらの特徴をまとめ、実現可能でかつ効果的な統計モデルの開発に必要な調査を行った。 健康を脅かす事象(症候あるいは疾病)の発生を早期に予知するバイオ・サーベイランスでは、その事象につながる可能性のあるすべてのデータを、定義された空間において実時間でモニターする必要がある。それには最近の地理情報システム(Geographical Information System)を利用した統計モデルの開発が効率的で有効である。その統計モデルに必要な要素としては、症候マップの僅かな変化(増加傾向、集積性、不連続な変化など)を早期に検出する機能が必要となるが、その変化の主なパターンには、ある特定地域(未知)にクラスターが出現し始める(Hot-spot cluster)型と、地域は特定されないが、近接した地域で事象が発現する現象が散在し始める(Global clustering)型の2種類がある。本研究では、この2種類の変化パターンの検出方法を中心に検討を行った。 海外共同研究者であるハーバード大のKulldorff助教授(申請時点では、Connecticutt大学所属)とは、平成16年度の夏にカナダのアトランタで開催された合同統計会議出席を通じて研究の打ち合わせを行った。その後はインターネットを通じて共同研究を実施した。特に、彼が実施している、ニューヨーク市とのバイオ・サーベイランスに関する共同研究の経験を本研究に生かした。
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