本研究は、バイオサーベイランスシステムに必要な症候の時間・空間的増加あるいは集積性を評価するための統計モデルを新しく研究することを目的としている。今年度は主に、次の二つのテーマについて検討した。1)Global test for spatial disease clusteringの方法の提案:個人の住所地が入手できる場合のcase-controlデータに基づく新しい疾病集積性の検定法を開発し、カナダ のモントリオールで開催された国際バイオメトリクス学会で発表するとともに雑誌Biometricsに掲載された。2)昨年までに検討してきたflexible spatial scan statisticのバイオサーベイラン スシステムヘの適用:海外共同研究者であるハーバード大のKulldorff助教授との共同研究により、マサチューセッツ州のサーベイランス・データを利用して、Kulldorff助教授らが開発したSaTScan法とその同定の違いを検討し、より柔軟な同定が可能なflexible space-time scan statistic法を開発した。その主要な結果は、米国のボルチモアで開催された2006年症候サーベイランス会議で発表した。本研究で開発された方法論を健康危機管理のためのサーベイランスシステムに組み込むことにより、最近日本でも話題にのぼった新興感染症SARS(新型肺炎)の流行の早期検出にも適用できる。 海外共同研究者であるハーバード大のKulldorff助教授との対面での共同研究は、米国のボストンのハーバード大へ訪間した際とボルチモアで開催された2006年症候サーベイランス会議において行った。後はインターネットを利用して行った。
|