下側頭皮質が色識別にどのように関係しているかを調べるために、注視課題、色カテゴリー課題、色弁別課題のいずれかあるいはすべてを訓練し、それらの課題を行っている時に下側頭皮質の単一ニューロンの記録を行った。注視課題ではCIExy色度図で赤、緑、青のCRTの3原色で作られる三角形内部に均等に分布する色を用い、カテゴリー課題と弁別課題ではCIExy色度図で赤と緑を結んだ線分を均等に分割する等輝度の11色を用いた。形は円などの単純な幾何学図形を用いた。カテゴリー課題ではそれらの色のそれぞれが赤か緑かどちらの色カテゴリーに属するかを判断させ、赤ならば注視を続け(NO-GO)、緑ならばサッケードする(GO)ことを訓練した。色弁別課題では11色のうちの一つが見本刺激として呈示され、その後見本刺激を含む2つの色刺激を注視点の上下に呈示し、見本刺激と同じ色にサッケードを行うことを訓練した。下側頭皮質の前中側頭溝の後端の外側付近に色選択性を示し、形選択性をあまり示さない細胞が集中して存在する場所を見つけた。この領域からニューロン活動の記録を行った。個々のニューロンが色の識別をどのように行っているかを調べるために、いくつかの定量的な指標を用いて検討を行った。まず最大応答と最小応答の比から色選択指数を求めることにより、色選択性の強さを定量化すると共に、最大応答の50%以上の応答を示した色の数から色選択性の鋭さを定量化した。この領域で課題に用いた色刺激に反応したニューロンは高い色選択指数を示し、鋭い色選択性をもつものが多かった。次に各色に対する刺激呈示毎の反応から個々のニューロンの活動が何個の色を識別する能力をもつかを定量的に検討するために、相互情報量の計算を行い、課題問で比較を行ったが、顕著な差は認められなかった。
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