本研究の目的は、(i)サーカディアン細胞質Ca^<2+>リズムを制御する遺伝子・細胞内小器官は何か?および(ii)サーカディアンCa^<2+>リズムは既知の時計遺伝子候補群の発現リズムと相互作用しているのか?を解析し、単一ニューロンレベルのサーカディアンリズム形成過程の全容を明らかにすることである。一年目の実験により、SCNニューロン内の約1日の細胞質Ca^<2+>濃度のリズムの発生にはPer1あるいはPer2アンチセンスmRNAは有意な効果を持たないことが明らかとなった。そこで本年はBmal1およびその転写に係わる分子の関与を解析した。 (1)SCNニューロンに見られるサーカディアンCa^<2+>濃度リズムに対するネイティブマウスBmal1及びドミナントネガティブBmal1遺伝子強制発現効の検討 マウスのネイティブBmal1を強制発現させると、四-五日間にわたりサーカディアンCa^<2+>濃度リズムが抑制された。この期間は、強制発現したBmal1が細胞核に局在する期間と一致していた。ネイティブBmal1のC末側182アミノ酸を欠損させたドミナントネガティブ体を同様に強制発現させると、さらに長きにわたり(約10日間)サーカディアンCa^<2+>濃度リズムが抑制された。これらの結果の一部は2005年Gordon Conferenceや2006年日本生理学会において発表された。 (2)核内オーファン受容体RORαの遺伝子欠損マウスにおける細胞内Ca^<2+>濃度リズム解析 Bmal1遺伝子発現に関与することが報告されているRORαの遺伝子欠損マウスのSCNスライス培養においてサーカディアンCa^<2+>濃度リズムを解析したところ、ホモ欠損では細胞致死率が高く、またヘテロ欠損では有意にサーカディアン振動の抑制が見られた。この結果の一部は2005年阪大蛋白研セミナーにて発表された。
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