体内時計細胞にみられるサーカディアン細胞質Ca^<2+>濃度リズムの発生に関与する時計遺伝子の機能を明らかにするために、Bmal1およびそのドミナントネガティブ体をコードする遺伝子を、CMVプロモーターとXpressタグを含む発現ベクターに組み込み、NIH3T3細胞や培養SCNニューロンに強制発現させた。なお、NIH3T3細胞への遺伝子導入は、通常のリポフェクション法を用い、SCNニューロンへの遺伝子導入には遺伝子銃を用いた。それぞれのタンパク質の細胞内局在や発現の様子は、抗Xpress免疫染色を行なうことにより解析した。その結果、ネイティブBmal1の強制発現は、24時間以内にBmal1タンパク質の細胞核凝集を引き起こし、遺伝子導入後約3日の間、細胞核で高いレベルに維持されることが明らかとなった。また、この間は、SCNニューロンのサーカディアン細胞質Ca^<2+>濃度リズムが抑制された。一方で、ドミナントネガティブ体の強制発現は、細胞質での一時的な局在に引き続き、細胞核への移行が起きるが、その期間は1週間以上におよび、より長期の細胞質Ca^<2+>濃度リズム抑制作用があることが明らかとなった。なお、ドミナントネガティブ体の慢性発現は、神経細胞死を引き起こす場合も観察された。本研究期間では、さらに、Bmal1遺伝子発現に関与することが報告されている核内オーファン受容体RORαの遺伝子欠損マウスを用いて、SCNニューロンのカルシウム濃度リズムを解析した。その結果、Bmal1ドミナントネガティブ体の強制発現と同様のリズム抑制が観察された。これらの結果は、体内時計ニューロンの生理活動リズム形成に、Bmal1の正常な発現リズムが必須であることを示唆している。
|