平成17年度は、狂犬病ウイルスを用いたニューロンの越シナプス性ラベルにより、サルの一次運動野に多シナプス性に入力する大脳基底核のニューロン分布を詳細に調べた。その結果、淡蒼球内節及び視床を経由して一次運動野の下肢、上肢、口腔顔面領域に入力する線条体ニューロンは、それぞれ被殻の背側から腹側に向かって局在分布しており、さらに上肢領域を遠位部と近位部に分けた場合、それぞれを再現する線条体ニューロンは、被殻の内外に局在分布していることが明らかになった。このような線条体ニューロンの分布様式は一次運動野から線条体への入力の体部位局在分布と一致するため、一次運動野に由来する大脳皮質-大脳基底核ループはいわゆる閉回路を形成していることが示唆された。本研究計画では、同様にして一次運動野に入力する小脳及び前頭前野ニューロンの体部位局在分布についても詳細に解析した結果、小脳核及び視床を経由して一次運動野の下肢、上肢、口腔顔面領域に入力するプルキンエ細胞は、それぞれ小脳皮質の吻側から尾側に向かって局在分布しており、また、運動関連領野を介して一次運動野に入力する前頭前野ニューロンについても、領野間で異なる体部位局在性を示すことがわかった。以上のデータから、行動制御に関与する神経回路の基本的枠組みが明らかになった。現在、前頭前野を中心に、大脳基底核、小脳、頭頂・側頭連合野、及び海馬を巡る神経回路網の解明を進めている。 また、パーキンソン病のモデルザルにおいて、代謝調節型グルタミン酸受容体タイプ1の発現が淡蒼球内節・外節や黒質網様部で特異的に低下していることを形態学的に明らかにするとともに、淡蒼球や黒質のニューロン活動にこのグルタミン酸受容体が関与していることを電気生理学的に示した。
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