狂犬病ウイルスを用いたニューロンの越シナプス性ラベルにより、サルの一次運動野に多シナプス性に入力する大脳基底核、小脳、前頭前野のニューロン分布、および前頭前野に多シナプス性に入力する頭頂・側頭連合野のニューロン分布を詳細に調べた。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)淡蒼球内節および視床を経由して一次運動野の下肢、上肢、口腔顔面領域に入力する線条体ニューロンは、それぞれ被殻の背側から腹側に向かって局在分布しており、さらに上肢領域を遠位部と近位部に分けた場合、それぞれを再現する線条体ニューロンは、被殻の外側部あるいは内側部に局在分布していることが明らかになった。このような線条体ニューロンの分布様式は一次運動野から線条体への入力の体部位局在分布と一致するため、一次運動野に由来する大脳皮質-大脳基底核ループはいわゆる閉回路を形成していることが示唆された。 (2)小脳核(歯状核と中位核)および視床を経由して一次運動野の下肢、上肢、口腔顔面領域に入力する小脳皮質プルキンエ細胞は、それぞれ小脳皮質の吻側から尾側に向かって局在分布しており、さらに上肢領域を遠位部と近位部に分けた場合、それぞれを再現する線条体ニューロンは、小脳皮質の尾側部あるいは吻側部に局在分布していることが明らかになった。また、特に上肢や口腔顔面領域を再現するプルキンエ細胞の一部はcrus領域にも分布していた。 (3)運動関連領野(主に6野)を経由して一次運動野の下肢、上肢、口腔顔面領域に入力する前頭前野ニューロンは、下肢が内側部(9野内側部)、上肢が背外側部(9野外側部、46野)、口腔顔面領域が腹側部(12野)に優位に分布しており、さらに上肢領域を遠位部と近位部に分けた場合、それぞれを再現する前頭前野ニューロンは、9野外側部・46野背側部あるいは46野腹側部に局在分布していることが明らかになった。 (4)前頭前野(特に9野と46野)に多シナプス性に入力する頭頂・側頭連合野のニューロン分布については、現在解析中である。
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