研究概要 |
大脳皮質の領野発生の分子機序を明らかにするために以下の研究項目を立て、研究を行った。 1)胚発生の後期に領域性をもって発現する遺伝子をDNA microarrayを用いて網羅的に解析した結果、皮質内側、背側、および外側特異的遺伝子として、34,33,15個の遺伝子をそれぞれ同定した(Funatsu et al, Cerebral Cortex,2004)。これから更にRT-PCR, in situ hybridizationを行って絞りこんだ遺伝子の中から、将来の体性感覚野の皮質層に発現しているWnt-7bをとりあげ、その機能解析を行った。機能解析を行うために、Wntの機能を抑制すると考えられるsoluble Frizzledを蛍光タンパク質GFPの遺伝子と共に胎生14日目の脳室上衣層に電気穿孔法により強制発現し、胎生18日に胎児脳を固定して、細胞の形態、移動を観察した。その結果、皮質4層を形成する細胞の移動が有意に低下していた。sFrizzledの分化に対する影響、Wnt-7bの過剰発現の効果、およびWntシグナルの詳細についてさらに解析を行っている。 2)視床ニューロンは大脳皮質の領野に選択的に侵入し、皮質4層に到達する。領野選択的な侵入のメカニズムは不明であるが、サブプレートニューロン(SP)の機能が重要であるとされている。我々はこの点を明らかにするために、日比正彦教授と共同研究を行い、SPニューロンの分化に異常があるfezlノックアウトマウスを用いて視床ニューロンの投射パターンを解析し、原著論文に述べられている視床ニューロンの投射異常を確認した。SPニューロンに特異的に発現している遺伝子を明らかにするために、fezl KOマウスを用いてDNA microarrayによる遺伝子発現パターンの解析を行っている。
|