研究概要 |
1)胚発生の後期に領域性をもって発現する遺伝子をDNA microarrayを用いて網羅的に解析した結果、皮質内側、背側、および外側特異的遺伝子として、34,33,15個の遺伝子をそれぞれ同定した(Funatsu et al, Cerebral Cortex, 2004)。この解析で得られた遺伝子の一つWnt7bの皮質ニューロンの分化、移動に関する機能解析を継続している。 2)皮質の領域性は、中枢側の遺伝的プログラミングと末梢側からの入力依存的なパターニング機構により決定される。我々は、末梢側の役割を解明する目的で、頬髭のパターンをShhの異所的発現により撹乱する実験系を確立した(Ohsaki et al., Dev Brain Res, 2002)。この系を用い、中枢側の遺伝的プログラムとは独立に変更された末梢のパターンが脳幹、視床、ついで大脳皮質に順次転写されることを明らかにした(Ohsaki & Nakamura, Neurosci. 2006)。 3)視床ニューロンは大脳皮質の領野に選択的に侵入し、皮質4層に到達する。領野選択的な侵入のメカニズムを明らかにするために、日比正彦教授と共同研究を行い、SP及び深層ニューロンの分化に異常があるfezlノックアウトマウスを用いて視床ニューロンの投射パターンを解析したところ、corticofugal projectionが皮質一皮質下境界を越える時点に障害があり、視床ニューロンが皮質に侵入できないことが明らかとなった。DNA microarrayの解析では、皮質一皮質下境界に発現する遺伝子に異常が認められないことから、5,6層ニューロンの分化異常による視床ニューロンとのハンドシェーク機構が障害されることが主要な原因であると考えられた(J.Com.Neurology, Komuta et al., 2007)。
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