研究課題
基盤研究(B)
我々は平行線維-プルキンエ細胞上のシナプスのAMPA受容体密度が大きなバラツキを示すことを明らかにしたが、その理由がこの種のシナプスの持つ高い可塑性にあるのではないかと考え、実際に小脳の運動学習によってこのシナプスのAMPA型受容体の密度分布やシナプス密度が減少することを明らかにした。マウスの行動実験は永雄グループが行い、記憶が安定的に形成される視機性眼球反応学習1時間の前後で、水平性眼球運動の調節に関係している小脳片葉の中央部三分の一で多数のシナプスを定量的SDS-FRL法で解析し、1時間の学習では有意なAMPA型受容体の密度の減少が認められ、学習1時間を5日間続けて行うことによって引き起こされる長期適応では、シナプス自体の密度が、30%以上も減少することを明らかにした。またこの長期適応現象と呼応したシナプス密度減少は、その後2週間通常の飼育を続けることによって、コントロールとほとんど有意差のないところまで回復する。これらの結果は、分オーダーから時間オーダーの短期的な記憶はAMPA型受容体の密度変化として一定のシナプスのpopulationに蓄えられる一方、日オーダーの長期的な記憶の定着にはシナプス結合という脳のハードウェアのリモデリングが必要であることを示唆している。また、この記憶が長期定着するメカニズムに迫ることを目的として、短期適応なしに長期適応を起こせるか、短期適応を起こしながら長期適応が起こせないモデルはないか、ということを検討した。もしシナプスの減少がAMPA型受容体の密度の減少に依存して引き続いて起こるタンデムなメカニズムを想定するならば、短期適応なしには長期適応は起こらないはずである。また、この移行に必須の分子があるとするならば、それを欠く動物では短期適応のみしか起こらないはずである。またこれらが、別のお互い独立なメカニズムで起こっているとすれば、それらを分離することが可能なはずである。我々は様々な条件を検討した結果、学習の時間を減らすことで短期適応は全く起こらないで、かつ通常の長期適応を引き起こすことに成功した。現在、この条件でAMPA型受容体の密度とシナプス密度の検討を行っている。また永雄グループでは、ある種のノックアウト動物を調べたところ、短期適応は全く正常に起こるにもかかわらず、長期適応に遅延のあるものを見出した。現在このミュータントを用いて、閥様に形態学的解析を行っている。
すべて 2006 2005 2004
すべて 雑誌論文 (18件)
Eur J Neurosci 23
ページ: 1479-90
Neuroscience 130
ページ: 567-80
Eur J Neurosci 21
ページ: 2073-82
Eur J Neurosci 19
ページ: 552-569
J Neurosci 24
ページ: 3694-3702
ページ: 2169-2178
Hippocampus 14
ページ: 193-215
ページ: 2727-2740
J Comp Neurol 475
ページ: 36-46
ページ: 836-48
ページ: 9921-32
蛋白質核酸酵素 49
ページ: 287-294
ページ: 836-848
Tanpaku, Kakusan, and Koso 49