研究課題
基盤研究(B)
申請者は網膜を用いて脊椎動物の中枢神経系の細胞運命決定の分子メカニズムの解明を目指している。網膜の中でも特に、ほ乳類においては光を受容する唯一のニューロンである網膜視細胞の発生、分化の分子機構の研究を行っている。視細胞発生の分子機構の解明にむけて、本研究において3つのプロジェクトを行った。(1)otx2遺伝子の発現制御因子の同定 網膜前駆細胞から視細胞へと分化する際にotx2遺伝子の発現が開始し、視細胞の細胞運命決定に必須であるので、otx2遺伝子の上流の活性化因子を同定することが細胞運命決定機構の解明に重要である。申請者らはotx2遺伝子を分化しつつある視細胞に発現させるプロモーター領域の解析を、トランスジェニックマウスを用いて行った。150kbにわたるotx2遺伝子のゲノム領域から解析を開始し、約3kbの領域が胎生期の分化しつつある視細胞の発現に必須であることを見いだした。現在、さらに数十bp程度の範囲に同定するべく解析を続けている。(2)網膜視細胞の発生における外的因子の機能解析 申請者らは細胞の運命決定における外的因子の役割を探るため、FGFR1の視細胞におけるコンディショナルノックアウトマウスを作成した。FGFR1は発生期の視細胞に強く発現している。組織学的解析と網膜電位図を用いた生理学的解析などを行ったが、有意な変化は見られず、FGFR1は強く視細胞に発現しているにもかかわらず、視細胞の発生や維持に必須でないことが明らかとなった(論文準備中)。(3)新たな網膜視細胞特異的遺伝子MR-Sの解析 申請者らが最近単離した新規の網膜視細胞特異的遺伝子MR-Sの生化学的解析ならびに生物学的機能解析を行った。MR-Sは重合しクロマチン制御に関わっていることが強く示唆された。また、MR-Sは網膜前駆細胞から視細胞の分化を弱いながら誘導することを明らかにした(論文投稿中)。
すべて 2005
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BMC Neurosci. 6・1
ページ: 5
Jpn J Ophthalmol. 49
ページ: 15-22