研究課題
基盤研究(B)
線虫は、遺伝学的解析に適した単純な多細胞生物である。ゲノム配列が解読されており、神経系の構造や発生の基本的な記載が充実している。当研究室では、線虫の遺伝子構造に基づいて、逆遺伝学的にシステマティックに変異体を分離している。転写因子を中心に分離を進めており、大半の遺伝子についての分離ができている。本研究では、その中でも、Etsファミリーに属する転写因子C42D8.4の変異体を用いた機能解析を進めている。C42D8.4遺伝子の発現パターンを検索したところ、頭部の少数ニューロンで発現していることが明らかになった。その中に、嗅覚受容ニューロンAWAが含まれていると思われる。C42D8.4の変異体アリルtm866では、オドラントに対する走化性が低下していることが明らかになった。さらに、tm866では、体の大きさが2割程度小さくなること、移動距離が小さくなることなどが見いだされた。C42D8.4のゲノムDMでレスキューを試みたが、移動距離が小さくなるなどの行動異常は復帰しなかった。近傍の別の遺伝子の変異による可能性が示唆される。現在、少数遺伝子まで絞り込みを行っているので、近日中に遺伝子同定が期待される。一方、C42D8.4の変異体の別アリルにより、嗅覚異常が再現することを確認するため、C42D8.4遺伝子の新しい欠失変異体tm1734とtm1755を分離した。現在、行動アッセイを進めている。以上かち、現時点では、嗅覚受容体群の遺伝子制御を行っているのは、Etsファミリー転写因子C42D8.4であり、近傍の別の遺伝子が個体の大きさと運動時の移動範囲などを規定していることが推測される。これらは、元々の変異体株から別々のストレインとしても分離されたことから支持される。
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