研究概要 |
研究2年目である本年度は脳標的化分子の安定化と結合物の作成方法について蛍光標識したビオチンをモデル薬剤として詳細に検討した。また脳標的化型に改変したリコンビナントアザミグリーンをマウスに投与して脳移行活性についてウエスタンブロットで検討した。 ・脳標的化分子を目的薬物と結合させることで、その機能に重要な立体構造が変化して脳への移行性が低下する場合がある。その問題を解決するために、脳標的化分子の立体構造の自由度を抑えるように分子両端にシステインを導入しそのS-S結合を架橋材ジブロモメタンにより固定して三次元構造の安定化を行ったところ、非常に反応効率が悪いことが判明した。 ・一方,脳移行性を持たせるためには特定の立体構造を構築する必要があることがわかった。そこで、S-S結合とLys-Lysを導入したアミド結合により高次構造を維持した分子を作成した。そこで脳移行性についてマウス生体に投与して検討したところ,前者は高い脳移行活性を示すものの酸化還元反応に敏感なため血中滞留性が悪く,後者は前者に比べ脳血中滞留性が25倍増大したものの移行活性が低下することがわかった。 ・薬物などと融合させたことによる相互作用により薬物活性を失わないようなリンカーの種類や反応条件の検討し、炭素鎖6のリンカーtrifluoroacetyl-caproic acid NHS esterを用いることにした。このリンカーによって種々の薬剤を脳移行分子に結合することができる。 ・結合産物の構造の検査:作成した脳標的化分子や薬物などとの融合産物はHPLCを用いて生成物と未反応物を分離して目的物のみを得るとともに、反応生成物は質量分析装置ABI Voyager-DE PROにより構造を確認した。 ・脳標的化型に改変したリコンビナントアザミグリーンをマウスに投与し脳を摘出後ウエスタンブロットによりアザミグリーンを検出したところ、対象タンパクがほとんど脳に移行しないのにたし,改変型のタンパクが脳内に検出できた。
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