研究課題
基盤研究(B)
ヒスタミンH_1受容体(H_1R)の遺伝子欠損(KO)マウスは、野生型マウスと同じ睡眠覚醒を示したが、ノンレム睡眠中の16秒以内の短期覚醒の回数と腹腔注射刺激後の入眠潜時が半減した。同様の変化は、野生型マウスへのH_1R拮抗薬(ピリラミン)投与により再現された。さらに、H_3R拮抗剤(シプロキシファン)投与は、野生型とH_1R-KOマウスの前頭葉におけるヒスタミン放出を同様に増大させ、野生型マウスの覚醒時間を延長したがH_1R-KOマウスの覚醒時間を変化させなかった。以上の結果は、H_1Rがノンレム睡眠から覚醒への変化に重要な役割を果たし、H_3R阻害剤の覚醒作用に不可欠であることを示している。前脳基底部クモ膜下腔へのアデノシンA_<2A>受容体(A_<2A>R)作動薬(CGS21680)の注入は、ラットの覚醒時間を短縮し前頭葉におけるヒスタミン放出を抑制した。A_<2A>R作動薬は麻酔下ラットの前頭葉と視索前野におけるヒスタミン放出を抑制し、結節乳頭核におけるGABA放出を増加させたが、前頭葉のGABA放出は変化させなかった。さらに、A_<2A>R作動薬による結節乳頭核のヒスタミン放出の抑制は、同部位へのGABA_A拮抗剤の投与により阻害された。これらの結果は、A_<2A>R作動薬がヒスタミン系覚醒中枢でのGABA放出に伴う活動抑制により覚醒を抑制することを示している。カフェインによる覚醒はアデノシン受容体に対する拮抗作用と考えられてきたが、脳内に存在するA_1とA_<2A>の2種類のアデノシン受容体のいずれが関与するのか不明であった。そこで、それぞれの受容体のKOマウスに対するカフェインの効果を調べた。その結果、カフェイン投与は、野生型マウスとA_1受容体KOマウスの覚醒を用量依存的に延長したが、A_<2A>R-KOマウスの睡眠覚醒に全く影響を与えなかった。従って、カフェインの覚醒反応はA_<2A>Rの拮抗作用によると考えられる。
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