研究課題
基盤研究(B)
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は細胞内シグナル伝達システムの中核であり、神経伝達物質やホルモン、さらに多くの臨床薬の標的となっている。これまで、GPCRはモノマーとしてGタンパク質と1:1で共役して機能すると考えられてきた。しかし最近、同種もしくは異なるGPCR間で複合体(ホモダイマー、ヘテロダイマー)を細胞膜上で形成することが、GABAB受容体、アドレナリン受容体、ドーパミン受容体など多くのGPCRについて報告されている。このためにGPCRのシグナル伝達や細胞内運搬機能などが調節されることから、GPCRの新しい多様性発現調節機構として大きな関心を集めている。我々は、主としてシナプスでの神経伝達調節を司るGPCR型プリン受容体系(アデノシン受容体およびATP受容体)においてのヘテロダイマー形成の役割を明らかにするためにプリン受容体サブタイプと他のファミリーのGPCRとのダイマー形成の特異性や機能について研究を行った。GPCRを共発現させた培養細胞や天然の動物組織をもちいて、リガンド結合アッセイ、2ndメッセンジャーアッセイ、免疫共沈降実験、蛍光抗体法、免疫電子顕微鏡観察などの手法により検討したところ以下の結果を得た。(1)プリン受容体サブファミリーであるアデノシン受容体は他のプリン受容体とダイマーを形成しやすい性質を持つ。たとえば血液凝固をコントロールする血小板に存在する3種のプリン受容体であるアデノシン受容体(A_<2A>)とP2受容体(P2Y_1、P2Y_<12>)では3受容体間でのヘテロダイマーやヘテロトリマーを形成する。アデノシン受容体(A_1)もA_<2a>、受容体やP2Y_1やP2Y_2受容体とダイマーを形成する。(2)プリン受容体(A1アデノシン受容体とP2Y2受容体を共発現させたHEK293T細胞をモデル系として用いプリン受容体問の相互作用が活性調節に関与する可能性を検討した。その結果、両受容体を同時に刺激した場合、Al経由のシグナル伝達は阻害され、P2Y_2経由のシグナル伝達は促進されるという新しい調節作用が判明した。(3)これらはプリン受容体ダイマー形成が細胞や組織の機能を様々に調節することを示唆する。
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