研究概要 |
抑制性GABAシナプス伝達効率の短期・長期的制御を仲介する細胞分子機構を解明するため、2004年初年度に得られた成果に基づき、さらに研究を進め以下の成果を得た。第一に、GABA伝達の登上線維神経伝達物質が起こす前シナプス抑制に関与する抑制性AMPA型グルタミン酸受容体の局在を検討し、(1)これがバスケット細胞の軸索終末に存在するGluR2/3型サブタイプであることを示す電気生理および免疫組織化学的証拠を得た.(2)この受容体が伝達物質の拡散によって活性化される様式を明らかにし、(3)この受容体が刺激されると神経終末へのCa2+流入が阻害されることを明らかにし、これらの成果を論文発表した(Rusakov et al.,2005; Satake et al.,2006)。第二に、ATPによる小脳GABAシナプスの長期増強作用(Saitow et al.,2005)の分子機構をNon-Stationary Fluctuation Analysis法を導入して検討し、(a)ATPは単一GABAA受容体を流れる単位コンダクタンスを増加した。(b)ATPはGABAA受容体分子の数を変えなかった。(c)ATPの増強作用は、CAMKII阻害薬によっては影響されず、プロティンキナーゼA(PKA)阻害薬によって抑制された。(d)ATPが何処から由来して、いかなる経路でGABAシナプスに到達するかも検討して、現在これらの成果を論文にまとめている。第三に、ノルアドレナリンがβ-アドレナリン受容体に作用し介在ニューロンからGABA放出を増強してGABA伝達を増強する機構を検討し、ノルアドレナリンは(a)cAMP-PKA依存性にGABA遊離装置の働きを促進し、(b)GABA遊離装置のCa2+感受性も高めることを明らかにして、その成果を論文発表した(Saitow et al.,2005)。
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