研究課題/領域番号 |
16300129
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 薫 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (50111373)
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研究分担者 |
岩本 義輝 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (50184908)
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キーワード | サッケード / バーストニューロン / ポーズニューロン / グレシン抑制 / 運動学習 / 適応 / 視覚誤差 / 脳内刺激 |
研究概要 |
1)サッケードの運動指令をコードするバーストニューロンがグリシン性抑制を受けることを昨年度報告した。本年度は、ポーズニューロンへの抑制入力を解析した。マルチバレル電極を用いて活動を記録し、グリシンあるいはGABA受容体阻害薬(ストリキニン、ビククリン)を電気泳動的に投与した。ポーズニューロンは注視期に持続的に活動しサッケードの間は活動を休止するが、ストリキニン投与により活動休止時間が顕著に短縮した。また、トリガーとラッチの役割を果たす抑制信号がいずれもグリシンを介することが明らかになった。一方、ビククリンの効果から注視期の活動調節にGABA性抑制が関与することが示唆された。 2)サッケード適応には室頂核が重要な役割を果たすことが知られている。解剖学的知見から、室頂核の出力は抑制性バーストニューロン(IBN)を介して運動ニューロンに伝えられることが予想される。そこで、適応課題遂行中のサルからIBNの活動を連続的に記録し解析を行った。IBNと反対側(オフ方向)のサッケードの振幅を減少させると、多くのIBNでスパイク活動の増加が認められた。オフ方向活動の機能的意義についてはこれまで明らかでなかったが、興奮性の運動指令を補正賦サッケードの振幅を調節する役割を担っていることが示唆された。 3)サッケード適応は運動終了時の視覚誤差に依存した学習であるが、誤差信号を小脳に伝える経路の詳細は不明である。この経路を解析するために、脳内刺激により適応が誘発される部位を探索した結果、中脳被蓋の内側部に有効部位が見いだされた。視覚誤差で誘発した適応と同様、サッケード直後に刺激を加えるとその終点が次第に変化すること、この効果は刺激と組み合わせたサッケードに特異的であることが明らかになった。以上の結果から、視覚誤差を伝える経路が中脳被蓋内側部を通ることが強く示唆された。
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