研究概要 |
本研究は、シナプス小胞の神経末端での存在様式、その移動、エンドサイトシス、リサイクル等の機構が、どのようなメカニズムによって制御されているか、どのようにシナプス信号伝達に関与しているか、明らかにすることを目的とした。本年度(平成16年度)得られた結果は次のとうりであり、一部は、雑誌に発表した。 これまで、シナプス小胞のエキソサイトシスとエンドサイトシスは、共役しており、同じCa2+流入によって制御されているという仮説が一般に受け入れられていた。しかし、我々は、様々なCa2+チャネル拮抗薬をスクリーニングした結果、クモ毒PLTXIIはエキソサイトシスを選択的に、逆に、flunarizine,La3+は、エンドサイトシスを特異的に抑制することを、見い出した。このことは、従来の仮説とは、全く違って、シナルス小胞のエキソサイトシスとエンドサイトシスは、別々のチャネルを介して流入したCa2+によって、支配されていることが、明らかになった。通常、エキソサイトシスを起こすと、エンドサイトシスに関与する分子の集合が、細胞膜でみられるが、flunarizine,La3+存在下に、エキソサイトシスを起こすと、これらの分子の集合は、起こらなかった。このことは、エンドサイトシスでのCa2+流入は、クラスリン、ダイナミンなどのエンドサイトシス分子の集合をおこす過程に関与していることをしめしている(Neuron,41;101-111に発表)。カルシウム拮抗薬、PLTXIIとLa3+存在下にエンドサイトシスをおこし、様々のタンパクリリン酸化、脱リン酸化薬の効果を調べた結果、シナプス小胞のエンドサイトシスには、起こる部位、化学的性質の違う二つのエンドサイトシスが存在することが明らかになった(Neuro2004で発表)。
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