研究課題/領域番号 |
16300133
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
畠 義郎 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40212146)
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研究分担者 |
一坂 吏志 鳥取大学, 医学部, 助手 (50359874)
佐藤 武正 鳥取大学, 医学部, 助手 (80346345)
赤崎 孝文 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30335393)
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キーワード | 眼優位性 / 可塑性 / 生後発達 / 片眼遮蔽 / 視覚野 / 臨界期 / ヘッブ則 |
研究概要 |
本課題は、研究代表者らが見出した、発達期視覚野での活動依存的軸索退縮現象について、その発現機構を明らかにすることで、神経回路発達のメカニズムの一端を探ろうとするものである。発達期の眼優位可塑性に関するこれまでの研究により、発達期には両眼入力が競合し、片眼遮蔽により遮蔽眼に対する視覚野ニューロンの反応性が失われることがわかっている。一方、片眼遮蔽と同時に視覚野ニューロンを抑制しておくと、通常とは逆に、視覚野ニューロンは遮蔽眼により強く反応するように変化し、健常眼への反応性が失われる。これらの知見は、従来より想定されてきた、有効な神経結合を強化する仕組みに加えて、皮質ニューロンが抑制されている時により強く活動している入力、すなわち無効な神経結合を選択的に淘汰する仕組みが働いていることを示している。 昨年度までの研究により、逆向きの眼優位可塑性が成熟期には発現せず、発達期特異的な現象であることがわかっている。そこで、この可塑性の特徴をさらに詳細に調べる目的で、発達期でのその発現の速さについて検討したところ、3日間の片眼遮蔽後でも顕著な逆向きの眼優位可塑性は発現しない例が多く、通常の眼優位可塑性より遅い時間経過で発現することが明らかとなった。発達期の動物を用いたこの実験の中で、過去の実験と同じ6日間の片眼遮蔽を施しても、顕著な健常眼への反応性の減弱が見られない例に多く遭遇した。実験条件を詳細に検討したところ、驚くべきことに、眼優位可塑性のピークとされる生後24日付近の動物では顕著な逆向きの眼優位可塑性は観察されず、臨界期の終盤である生後40日付近で強く観察されることが明らかとなった。逆向きの眼優位可塑性は形態変化を伴う入力投射の可塑性を反映している可能性が高いことから、入力軸索の形態変化が通常の眼優位可塑性の臨界期のピークより遅く発現している可能性が考えらる。これは臨界期のピークに眼優位可塑性の全ての変化が起こるとするこれまでの概念を覆すものであり、神経回路各部の変化が段階的に起こる可能性を示している。
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