本基盤研究では、線条体ではどのような動作原理で情報処理がなされているのか、大脳基底核で処理されて視床を経て戻ってきた情報は線条体にどのような影響をもたらすのかについて明らかにする。4年の間に達成したい具体的な目標は以下の2点である。(1)線条体内の機能モジュールの全容を明らかにする。線条体全体の神経回路網の性質を明らかにすると同時に、LTS細胞とcalretinin細胞の役割、ドーパミン細胞との関係についても明らかにしたい。(2)視床-線条体投射と線条体機能モジュールとの関係についての研究。視床からのフィードバックが線条体のモジュールの活動にどのような影響をもたらすかについて皮質-線条体-視床スライスを用いたスライスパッチ法および電位感受性色素を用いたイメージングによって明らかにする。正常のマウスおよび遺伝子改変マウスを利用して電気生理学、電位感受性色素イメージング、免疫組織化学を駆使して、次の目標を段階的に達成していく。今年度は線条体内の局所神経回路網の全容を明らかにするため、FS細胞とMS細胞によって形作られる機能モジュールの動作原理をマウス脳のスライスパッチクランプ法を用いて明らかにした。すなわち、マウス脳の皮質-線条体スライスを用いて同時に2個の細胞からのパッチ記録を行い、線条体内の局所神経回路網の全容を生理学的に解明する。その結果、MS細胞からなる細胞集団を少数のFS細胞が抑制性シナプスを介してその活動を制御し、MS細胞集団の出力のS/N比を改善することが明らかとなった。
|