研究概要 |
本研究は、15系統近交系マウスの収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の検討とマウス高血圧量的形質遺伝子座(QTL)解析の実施である。 15系統のマウスSBPとDBPは、NZO/HIJで最大値(132.4mmHg)、C3H/HeJで最小値(100.5mmHg)を示した。次に、NZOにおける高血圧形質を遺伝学的に解析するため、NZOとC3Hを交配しF2を224個体作製した。NZOは肥満やインスリン抵抗性を伴うII型糖尿病、を呈することが知られており、高血圧との関連が推測される。そこで、SBPに加えてBody MassIndex(BMI)、さらに血漿中インスリンおよびレプチン濃度を測定した。BMIとレプチン、レプチンとインスリン間において相関関係が認められ、肥満とインスリン抵抗性が連鎖していることが確認された。しかしながらSBPとBMI、レプチンおよびインスリン間においては相関関係が見られなかった。肥満やインスリン抵抗性は高血圧発症に関わると考えられているが、NZOの高血圧遺伝子は肥満やインスリン抵抗性とは独立し存在する可能性が示唆された。 高血圧自然発症NZOマウスにおける高血圧原因遺伝子座を同定するため、我々はNZOとC3HマウスのF2子孫において交配方式を共変量とした血圧QTL解析を実施した。我々はSBPとDBPに関わる3つのMain QTLを検出した。さらにSBPとDBPから算出したprinciplecomponent(PC1)についてもQTL解析を実施した。結果、新たに1つ合計4つのmain QTL(Chr 1,3,4,8)が同定された。Simultaneous searchではPC1においてsignificant epistaticQTLペアーが2つ(Chr 1と4、Chr 4と8)同定された。最終的なMultiple regression解析において、先の2つのepistaticなQTLペアーが血圧分散の29%を説明することが明らかとなった。本研究の結果は、血圧異常にエピスタシスな相互関係を持った遺伝子がネットワークを構築し関わっていることが示され、高血圧発症には階層的な遺伝構造が複雑に関与することが示唆された。
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