研究概要 |
MSM BACクローンからの遺伝子多型情報と標準系統におけるSNPの分布様式 現在までにMSM BACクローンの端末配列(約40万配列)を,公開されているC57BL/6Jゲノム配列(NCBI mouse Build 30)と比較し,約63000クローンの染色体上の位置を決定し,これにより全ゲノムの約90%をカバーした.また,C57BL/6JとMSM/Msとの間で約49万のSNP(一塩基多型)を同定し,マッピングを行った.これらのマップ情報はWeb上で公開しており,オンライン上でBACクローンをスクリーニングすることが可能となった.端末配列中のSNPの出現頻度は100bpあたり0.93SNPsと高率であるにもかかわらず、非常に興味深いことにその分布は均一ではなく、C57BL/6J全ゲノムの約5%にあたる領域では殆どSNPが検出されないことを見出し,そのような領域のゲノム上の正確な位置を決定した。このことは比較的最近アジア産マウス由来ゲノムがdomesticus亜種へ移入されたことを示しており,現在広く利用されている標準近交系統はdomesticusと,molossinusあるいはmusculusというアジア産亜種との交雑系統に由来する,という説を支持する。標準近交系統ゲノムの大部分はM.m.domesticusに由来するが,その一部はmolossinusなどのアジア産亜種に由来しており,各標準系統に見られる表現型の違いは2種類の亜種由来のゲノムの組み合わせの違いに起因するとも考えられるので,C57BL/6J以外のマウス系統のゲノムのどの部分がアジア産マウスに由来しているかを決定することが次のステップとして非常に重要になるものと考えられる.
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