研究概要 |
本研究では、日本産野生マウス、M.m.molossinus亜種由来であるMSM系統のBACライブラリーとそこから得られるゲノム情報を基盤として、発生工学、'遺伝学の手法を駆使して新規実験動物を作製すること、MSM系統から得られたゲノム情報を用いた効率的な機能ゲノム解析手法を確立することを目的とする。H18年度はBACクローン全体を利用して遺伝子ターゲティングが可能かを調べるために,X連鎖のポリコム蛋白質遺伝子であるScml2を含むBACクローンを大腸菌内の相同組換え技術を用いて改変し、ベクターを作製し、ES細胞に導入した。その結果、約200のコロニーから3つの相同組換えES細胞を得ることができた。これを胚盤胞に移植し、ES細胞の貢献度の高いキメラを得ることができた。比較的高頻度で相同組換え細胞を得ることが出来たので、現在は相同組換えにより、MSMゲノムとB6ゲノムの置換が可能かを検討している。 MSM BACクローンからのSNP情報を用いた標準系統ゲノムのモザイクパターンの同定 これまでに,C57BL/6Jのような標準近交系統のゲノムにはmolossinusに由来するゲノム領域が混在することを見出している。そこで,C57BL/6J以外のマウス系統においても,molossinus由来のゲノム領域が存在するのか、どのようなモザイク構造を持つかを調べるためにSNPチップを用いて、1500マーカーのSNPタイピングを28種の実験用近交系統、20種の野生由来近交系統に対して行った。その結果、調べたすべてのラボ系統にmolossinusタイプのSNPを示すゲノム領域が見出され、そのモザイク様構造は各系統で同一ではなく、それぞれ類似性はあるものの異なるパターンを示した。このような異なる亜種由来のゲノムの混在がラボ系統の多様な表現型を生んでいる可能性がある。
|