1.磁場による血行動態変化の測定 磁場中では血液粘度が増加するので、静磁場による血行動態の変化が予測される。そこで、7T動物用MRスキャナー内外でのラット脳内の酸素化および脱酸素化ヘモグロビン量を近赤外分光法により測定した。その結果、7T磁場内外でのヘモグロビン量に顕著な変化は認められなかった。このことより、既に報告されている磁場中での血流量低下を仮定すると、磁場中で酸素供給が低下していることになる。磁場内外での血流量変化の確認を継続中である。 2.磁場による誘眠効果の確認 MRI検査中に眠気を感じることが言われている。この誘眠現象がMRIの静磁場に起因するものであるか否かを確認することなどを目的に、1.5T MRスキャナーの静磁場の消磁前後で9人の被験者頭部に磁場中で使用可能な脳波測定用電極を装着しMRスキャナー内で脳波測定を行った。このとき、MRI用血圧測定装置も併用し血圧もモニタした。また、消磁後の脳波測定の際、被験者には消磁したことを伝えずに測定を行った。磁場中での脳波波形はバリストカーディオグラムの影響を受け大きく歪むので、拍動に同期する波形成分を除去する特殊な波形処理を行った。さらに安静時の脳波測定の他に、音程の異なる音を認識させることで覚醒状態を維持しそのときの脳波測定も行った。この覚醒状態での脳波は微妙な環境の違いには左右されないので、静磁場の有無に関わらず基本的な参照脳波となり得た。その結果、静磁場による安静時α波の増加が確認された。なお、静磁場の有無による血圧変化は認められなかった。
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