1.5T MRスキャナーの静磁場の消磁前後において、MRスキャナー内で安静時および聴覚オドボール課題遂行時の脳波測定を行った。磁場中での脳波波形は、拍動に起因する体動の影響を受け大きく歪むので、この影響を取り除く新しい解析方法の開発を行い解析した。その結果、静磁場内で課題を行ったときにθ波が増加することが確認され、1.5T MRIの静磁場による脳活動の変化がはじめて明らかにされた。そのとき他の脳波には変化は認められなかった。静磁場内で増加したθ波は前頭部ほど顕著であったので、Fm(Frontal midline)θ波であるといえる。Fmθ波は、ある事象に意識を集中するために他の刺激に対する反応を抑制する機構に関与しているといわれている。一方、静磁場内では血流速度が低下するほど血液粘度が増加するので、静磁場内では血流速度低下と血液粘度増加が相乗的に作用し血流変化が促進されることが示唆される。したがって、課題遂行時のFmθ波に関連する血流の低下が静磁場内では発生しやすくなると解釈できる。 MRIの静磁場が人体の血流にどのよう影響を与えるかを調べるため、健常成人男性2名を対象に、1.5および3.0 T MRIにて頭部の時系列高速撮像を複数日に複数回行い、静脈洞画像信号強度揺らぎの広帯域周波数スペクトル解析を行った。その結果、静脈洞では血流速は一定で血液酸素飽和度が揺らいでいることが判明した。さらに、その血液酸素飽和度揺らぎスペクトルには拍動と呼吸による成分が認められ、その比(拍動成分/呼吸成分)は3.0 Tでは1.5 Tの1.9±0.2倍となった。このことは、静磁場による血液粘度増加を介し、動脈伸展性が低下することで解釈できた。以上により、MRIの静磁場が血液循環に影響を及ぼすことを確認し、静脈血の時系列MR信号強度スペクトルには血管進展性の情報那含まれていることを示唆した。したがって、スペクトル解析を行うことで血管進展性を画像化できる可能性があり、動脈硬化など様々な病気の新しい早期診断が期待される。
|