研究課題/領域番号 |
16300146
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
覚知 豊次 北海道大学, 大学院・工学究科, 教授 (80113538)
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研究分担者 |
佐藤 敏文 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80291235)
加我 晴生 独立行政法人産業技術総合研究所, ゲノムファクトリー研究部門, 主任研究員 (20356752)
矢野 重信 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究所, 教授 (60011186)
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キーワード | セルロース / ハイパーブランチ糖鎖 / ゲル / 止血剤 / シーラント / 糖鎖誘導体 |
研究概要 |
本研究では、未知感染症の危険のある人・動物由来医療品の代替品として、セルロースや多分岐多糖より得られる安全・無害な糖鎖誘導体に注目し、これらを用いた新しい機能性医療用ゲル材料の実用化を検討した。 多分岐多糖アミノ酸カルバメートは疎水性溶媒中で親水性物質を捕捉する両親媒性の球状ナノカプセルとして作用した。多分岐多糖アミノ酸カルバメートはアミノ酸と糖という生体に安全な原材料から合成されており、したがって、この両親媒性を利用した徐放性ナノキャリアとして、溶性化合物を体内で徐放するドラッグデリバリーシステムへの展開が可能であった。 多分岐多糖をマクロ開始剤としたN-イソプロピルアクリルアミドの重合により、多分岐多糖をコアに持つ温度感受性ポリマーを合成した。このポリマーの水溶液は低温では液体、高温でハイドロゲルになり、その転移は体温付近で起こる。この性質を利用することで、温度に応答して薬剤を放出するドラッグデリバリーシステムや、傷口に塗布した瞬間にゲル化し保護する薬剤入り創傷被覆剤としての応用が可能となった。 セルロース誘導体を基材とした机上実験による反応速度やゲル物性の評価結果と生物学的安全性予備評価による評価結果から、用途に相応しい組成を決定した。セルロース誘導体を基材として、ポリアミンやポリイソシアナートと反応させることによってゲルを形成することができた。架橋剤を種々選択することで、反応速度やゲル物性を変化させうることを確認した。反応速度が高いものを選定して、投与方法、形態を変化させて机上実験を実施した結果、これらの材料が止血剤、シーラントの候補として有望であることが確認できた。 本研究の成果により、セルロース誘導体や多分岐多糖誘導体が工業的規模で再現性良く生産できるようになり、これら糖鎖誘導体を基盤物質とした新しい医療ゲル材料の開発が可能となった。
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