研究概要 |
本研究では,fMRIの高い空間分解能,脳磁図の高い時間分解能の特徴を合わせ持つような脳機能イメージングの開発をめざしている。このため,両者の信号発生メカニズムを調べ,神経活動と脳血液状態との関連性,および,実際の脳内における電気活動の興奮性と発生する脳磁図や脳波との関連性を明らかにすることを目的とする。また脳磁図とfMRIで得られた結果を比較し,空間的,時間的な信号の変化と両者の関連性を調べることも目的としている。 このような計画の中,本年度は,高分解能SQUIDを用いて,ラットやマウスの小動物の発生する磁場を高空間分解能で測定するシステムの構築を行い,カエル座骨神経の神経磁場の計測,さらにマウスの脳磁図計測を行った。その結果,2mmの範囲内で磁場極性の反転を確認でき,空間分解能よく観測できた。また,マウスの体性感覚誘発磁場,聴覚誘発脳磁図の計測に成功した。しかしマウスの脳はヒトのように脳溝が入り組んでなく表面が比較的滑らかであるため,脳磁図の信号強度が非常に弱く,3万回の加算を行うことによって,やっと観測できる程度であった。このため,信号源推定ができるほど頭皮上複数の部位での測定ができず,発生源推定まで至らなかった。これを解決するためには,好感度の多チャンネルマイクロSQUIDの開発が必要である。 一方,fMRIを用いた研究では,声を用いた人物同定の研究を行った。その結果,視覚入力による人物同定と,聴覚入力による人物同定の脳の活動部位は,右側頭部の下側頭回や紡錘状回に反応が見られ,これは視覚入力による人物同定の際に活動する部位と重なっていることがわかった。
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