研究課題
基盤研究(B)
本研究では、非常に高い瞬時ピークパワーを有するフェムト秒(=10の-15乗秒)パルスレーザー光によって誘起される『真皮コラーゲンの非線形光学効果』に着目し、生体SHG光(第2高調波発生光)を用いた皮膚診断の非接触リモート化及び高度化に関する研究を行った。生体組織のコラーゲン配向測定では、生体SHG発生効率がレーザー偏光とコラーゲン配向の関係に強く依存することに着目し、コラーゲン配向を抽出する手段としてSHG偏光解析法を提案した。実際のヒト組織に適用した結果、組織学的所見と一致した結果が得られ、本手法の有効性を確認した。真皮コラーゲンのキャラクタリゼーションでは、高コントラスト・高空間分解なSHGイメージから、真皮コラーゲン線維の3次元分布を可視化した。また、臨床応用に向けた予備実験として、ヒト前腕皮膚のin vivo計測を表皮越しに行い、SHG偏光解析結果から前腕では腕長手方向にコラーゲン配向していることを確認した。皮膚計測への応用例として、火傷診断と老化診断に関する基礎研究を行った。火傷診断では、コラーゲン熱変性に伴い生体SHG光強度が減少することに着目し、生体SHG光を用いた新しい火傷診断法を提案した。深さ分解SHGイメージング及びSHG断層イメージングから、火傷領域及び火傷深度を非接触リモートで可視化することに成功した。一方、老化診断では、自然老化及び光老化に伴う特徴的なコラーゲン線維分布の変化を、SHGイメージングを用いて捉えることを試みた。その結果、光老化真皮では表皮境界付近の真皮コラーゲン線維からの生体SHG光が減少することを確認した。これら一連の研究成果から、生体SHG光を用いた真皮コラーゲン測定が皮膚科学の基礎分野だけでなく火傷や老化といった臨床分野にも有用であることが分かった。
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