研究概要 |
ヘモグロビン(Hb)小胞体が有茎皮弁の虚血領域の酸素化に有効であることが最近明らかにされたことを受け、H16年度は、低酸素領域に効率的に酸素を供給するための条件を検討することを目的とし、Univ.California, San Diegoとの共同研究として、Hb小胞体投与後に、細動脈の血流停止後の酸素分圧の変動から、Hb小胞体の酸素放出の特徴を明らかにすることを目的とした。Hamster dorsal skinfold window modelを利用し、皮下微小循環を観測部位とした。血管内酸素分圧の測定には、Pd-coproporphyrin/アルブミン複合体を予め投与し、その燐光寿命から算出した。Hb小胞体を7mL/kg投与した。顕微鏡下に細動脈(直径約50μm)を硝子製微細ピペットで30秒間経皮的に圧迫して血流を停止させ、その100μm下流域の血管内酸素分圧の変化を追跡。Hb小胞体の酸素結合平衡曲線より酸素飽和度の推移を算出した。Hb小胞体は、高酸素親和度(P50=8mmHg, HbV8)、および低酸素親和度(P50=29mmHg, HbV29)の二種類について検討した。細動脈内の酸素分圧は平常約50mmHgであるが、血流停止させると直ちに酸素分圧は低下し、最終的に5mmHgに到達した。しかしHbV8を投与した場合は、HbV28の投与に比較して僅かに遅延された。また、酸素飽和度の推移から、血管内酸素分圧が10mmHg以下になると、赤血球とHbV29の酸素飽和度は10%以下に低下するが、HbV8の酸素飽和度は60%近い値を維持し、より多くの酸素を保持しながら酸素を徐放した。投与量が全血液量の10%と僅かであるにも拘らず、低酸素領域では赤血球上回る酸素供給源として作用していることが明らかとなった。
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