本年度は、DNA内封ナノ粒子の細胞核への効率のよい標的化のために、核移行シグナルの至適化をさらに進めるとともに、精製ラムダファージ懸濁液に含まれる不純物をさらに除去して細胞毒性の減少を図った。核移行シグナルの至適化では、これまで使用してきたSVLT32核移行シグナルペプチドの構造をさまざまに改変し、C末端側をFLAG-Tagで置換することにより、核への標的化活性を従来の2倍以上の約5%まで上昇できることを見いだした。また疎水性を持つ不純物の除去のためにTriton X114による処理を精製過程に導入し、混在するエンドトキシンの濃度を10%以下に下げてこれまで問題であった細胞毒性を低減することができた。またPolyoma virusのCapsidタンパク質由来の核移行シグナルをつけたDタンパク質発現ベクターを作成し、このペプチドを呈示したファージの作成に成功しているが、まだファージ粒子の製造効率が悪く、現在、大量調製の条件を検討中である。また、ラムダファージのEタンパク質に変異を入れたSmall Head mutantを作ることができるパッケージング大腸菌の作成に成功し、この大腸菌を使って作成したファージの頭部が予想どおり野生型の頭部よりも小さいことを確認した。現在、マーカー遺伝子とパッケージングに必要なcos配列を組み込んだ約20kbpから25kbpのプラスミドを作成中で、この小さな頭部と組み合わせた変異型ファージの作成を準備中である。
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