研究課題
基盤研究(B)
これまで、ある種の水溶性高分子が高圧下で強固な水素結合を形成し、ハイドロゲルやナノ粒子等の構造体を形成することを発見し、これを用いて、ポリビニルアルコール(PVA)とDNAとの複合体調整に成功した。本年度は、PVA/DNA複合体の遺伝子ベクターとしての機能解析とPVAに変わる生体適合性材料あるいは生体由来材料の可能性ついて検討した。まず、PVA/DNA複合体の物性について詳細に検討した。水素結合阻害剤存在下では複合体が形成されなかったことから、水素結合性を介した複合体であることが明らかとなった。AFM観察、CDスペクトル解析により、DNAの主あるいは副溝にPVAが巻きついた状態であることが示唆された。培養細胞への導入実験においては、高頻度の細胞内取り込みが示されたが、5時間後の導入遺伝子の発現効率は低かった。しかし、in vtroの発現実験では、20時間の血清存在下においても遺伝子発現が認められたことから、PVA/DNA複合体の高核酸分解酵素耐性が示され、長期間の遺伝子導入への可能性が示唆された。また、遺伝子発現の改善の試みとして、食胞からの速やかな複合体の脱出を達成させるため、無機塩の添加を行った。遺伝子発現効率の上昇が示され、市販品と同程度の遺伝子発現強度であり、遺伝子発現の改善に成功した。PVAに変わる合成高分子としてポリエチレングリコール(PEG)を採用した結果、PEGにおいてもDNAとの複合体形成がなされた。PEGは生体適合性が高く、実際の臨床においても用いられていることから、その有用性に期待できる。生体由来材料としては、血清成分であるIgGと多糖のDextranを用いた。両者においても複合体の形成が示され、また、細胞内への取り込みも確認できた。以上の検討から、本年度の目的はある程度達成され、来年度以降は、より高遺伝子発現効率な超高圧誘遺伝子ベクターの開発を行う。
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Matererials Science and Engineering C 24
ページ: 794-801