研究概要 |
○高速度顕微観察システムの改良 時間・空間分解能の向上を目指し,微弱光増幅装置の利用や照明用アーク放電型光源の集光光学系の改良に関して検討した.その結果,対物倍率40倍では最小露光時間は200nsから20nsに向上し,最大撮影速度は毎秒400万コマから1,600万コマに向上した. ○減衰特性計測装置の開発 我々が以前生体組織の減衰特性の測定で開発した技術を基に,微小気泡懸濁液の減衰特性を高精度に計測する装置を開発した.中心周波数10MHzの広帯域パルスを用いることにより3から14MHz程度の帯域で微小気泡懸濁液の減衰の周波数特性が計測でき,計測の半自動化により精度向上を図った. ○微小気泡のふるまいの高速度観察によるシェルの機械的特性の検討 1つの微小気泡に音圧が増加する超音波パルス列を照射して気泡の径振動を高速度観察し,超音波の音圧と径振動振幅の変化の関連からシェルの機械的特性を調べた.観察対象としては,7種類の超音波造影剤と1種類のサブミクロン気泡,1種類のプラスチック気泡を用いた.観察の結果,リン脂質系のシェルでは,低音圧から音圧に応じて膨張・収縮が増強する様子が,バルミチン酸やアルブミンシェルの気泡では,ある音圧閾値を越えて初めて振動を始める特性が確認され,その違いは臨床で用いられている超音波照射条件の違いに対応していた. ○気泡懸濁液の音圧依存性減衰の計測によるシェルの機械的特性の検討 上記9種類の微小気泡懸濁液の減衰特性を,印加する超音波の音圧を変化させて計測した.その結果,それぞれの気泡の減衰係数の周波数特性には,減衰の最大値やその周波数に特徴ある音圧依存性が確認された.この特性は,高速度観察で捉えた各気泡の膨張・収縮運動の違いを反映していたことから,音圧依存性減衰の測定は,微小気泡のシェル特性の推定に有用であることが確認された.
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