研究概要 |
平成17年度は前年度における研究、すなわちKDH-8肝癌を有するラットの集束超音波照射群と非照射群の生存率の対比と細胞死形態の評価としてアポトーシス関与の検討を受けて、微少気泡存在下における集束超音波(HIFU)による抗腫瘍効果をin vitro, in vivoにて検討した。 具体的には(1)in vitroとして微少気泡(Levovist、Definity)存在下超音波照射による温度上昇を超音波連続波1.5W/cm^2を用いて検討した。(2)in vivoとして家兎の皮下に移植したVX2腫瘍にHIFU焼灼を行う前にOptison(濃度4.8μ/ml)、Definity(濃度5.0μ/ml)、ならびにLevovist(濃度300mg/ml)を耳介静脈より持続静注して、HIFU焼灼を施行した。 結果(1)in vitro : Levovist、Definityのいずれにおいてもコントロールと比較して温度上昇が得られ、温度上昇は微少気泡の濃度が上昇するほど増加した。 結果(2)in vivo : OptisonおよびLevovist併用下HIFUにおいてはHIFU単独よりもそれぞれ、1.3倍、1.1倍の壊死範囲の拡大が見られた.Optison併用下では腫瘤の完全壊死が見られたが、Levovist併用下ならびにHIFU単独では一部に残存が見られた.Definity併用下では腫瘤増大による変性が見られたが治療による壊死は確認できなかった.HIFU単独治療と比較して0.7倍と壊死範囲が縮小した.HE染色にてHIFU単独と微少気泡-HIFUの間には病理学的な相違はなかった. 以上よりHIFUは微少気泡の存在下において非存在下と比較して照射エネルギーの増大と腫瘍壊死が拡大することが明らかとなった。すなわち、これら一連の実験において、微少気泡添加でのHIFU照射は抗腫瘍効果を増強することを示した。これらの実験は将来的にHIFUを人体において行う際により効率的かつ完全な抗腫瘍効果を得るための重要な基礎的データとなることが示唆された。
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