研究概要 |
部分腎摘慢性腎不全モデルラットに対する長期的運動,低蛋白食療法,アンジオテンシンII受容体拮抗薬olmesartan(OLS)の運動耐容能,腎機能,腎組織障害,尿蛋白排泄量,骨格筋,骨代謝,骨塩密度に対する影響 [方法]雄性WKYラットで5/6腎摘除慢性腎不全モデルを作成した.ラットを,1)普通食(NPD)群,2)低蛋白食(LPD)群,3)NPD+運動(EX)群,4)LPD+EX群,5)EX+LPD+OLS群,6)偽手術群(S)に分け,12週間治療した.EXは,トレッドミルを用いた速度20m/分の走行を,1日1回60分間,週5日間,12週間行った.EX開始前と後12週間にわたって,定期的に,収縮期血圧(SBP),体重,摂食量,尿量,24時間尿蛋白排泄量(UP)を測定した.また,トレッドミル試験を行って最高酸素摂取量(peakVO_2)を測定した.最終日に採血し,血清クレアチニン(Scr),血液尿素窒素(BUN)を測定した.心,大動脈,腎,大腿骨,ヒラメ筋,長趾伸筋を摘出し,組織学的に評価した. [結果]慢性腎不全ラットのpeakVO_2はSラットに比較して有意に低値を示し,腎不全ラットにおける運動耐容能の低下が示唆された.腎不全ラットの走行速度20m/分での酸素摂取量はpeakVO_2の約80%であった.腎不全ラットの大腿骨の成長軟骨と海面骨に石灰化障害が生じていた.NPD群に比較してLPD群のUP, Scr, BUN, IGS, RIV, NPD+EX群のSBP, BUN, IGS, RIV,さらに,LPD+EX群の糸球体ED-1発現細胞数は各々有意に低値であった.NPD+EX群に比較してLPD+EX群のUP, BUN, IGS, RIVは有意に低値であった.LPD+EX+OLS群のRIVとSBPは全腎摘群中で最も低値であった.EXによるヒラメ筋毛細血管密度とタイプI線維の増加を認めた. [結論]LPDとEX単独による腎保護効果と,LPDとEXの併用による腎保護効果の増強が示唆された.EXによる,体力の改善に重要なタイプI線維比や毛細血管の増加効果が示唆された.LPD, EXおよびOLSの3者併用が腎皮質間質増殖抑制効果を増強し,ScrとBUNを増悪させることなく慢性腎不全モデルラットの高血圧を改善させた.以上より,進行性腎疾患における運動療法の有効性の機序を解明する重要な手がかりが得られた.
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