研究概要 |
高齢化社会の進展に伴い,高齢運転者の交通事故率の増加という社会問題が生じている.生活するための移動手段として車が必須で,健康上の問題から生ずる運転時の身体的・精神的不安を抱えながらも運転を断念できない高齢運転者が多いことが,事故増加の一因になっていると考える.そこで本研究では,以下のことを明らかにすることを目的とする. ・運転時に多大な危険を及ぼしかねない「痴呆」という要因に着目し,痴呆高齢者の心身特性においてどの特性が運転行動と関係が深いかを明らかにする. ・痴呆高齢運転者の運転行動に見られる定量的な特徴の抽出(モデル化)を行い,交通事故につながる"不安全行動"を明確化する. ・痴呆高齢運転者の特徴的な運転行動をシミュレータ等の環境下でモニタリングすることが可能なセンシングシステムの開発を行う. ・実際に痴呆高齢運転者の運転行動のモニタリングを行い,低頻度の不安全行動の場合,緊急停止などの支援装置のついた移動体のみ運転可能,高頻度で不安全行動が見受けられる場合,運転断念といった運転可能判断を行うための公的な社会的データソリューションシステムを提案する. 16年度は,まず文献調査,実態調査により,初期痴呆における身体・生活特性と運転の関係の調査企画を実施した.まず,臨床医学の痴呆判定に倣い,痴呆の様々な症状の変動を刻々と追い続けるのではなく,その症状を引き起こす根本原因である認知障害,特に"脳機能の持続の低下"の注目し,その症状と運転の関連性の特徴抽出を少数の被験者に対して行った.更に,シミュレータを用いてセンシング・モニタリングするための装置設計・製作を行い,痴呆と同様に認知能力が低下する酒気帯び状態の非高齢被験者を用いた基礎実験を実施し,認知低下時の運転行動のデータを採取した.
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