研究概要 |
前年度までに,1組の触覚呈示装置とマスタ・ハンドの改良設計および製作を行い,マニピュレータシステムに実装して力覚と触覚の融合ディスプレイを完成した.その際に,ピンの不揃による違和感や,アクチュエータ駆動系のノイズが起因となる不必要な振動が呈示面に発生するなどの問題の解決を図るなど主に改良を進めた.しかし,制御回路が手作りであるために動作が安定しないことを主な原因として十分な実験を行うことができなかった.特にPZTアレイとボードを接続するコネクタ部などの半田付け部については,自作による回路製作はほぼ限界に近づいていると思われる.そこで,回路設計を見直して,ドライバボードとコネクタ部分の回路設計を実施し,設計データを外注業者に引き渡すことによっで両者を製作した. 実験では,本装置のリハビリテーションへの適用性を検討する目的から,リハビリテーションの現場で実施されているペグ差し運動を被験者に実施させて性能評価を行う.この実験は,患者の自立の基礎となる食事行動の中から仮想の食品を掴み所定の場所におく作業の基礎にもなっている.仮想ペグ差し運動は,健常者の被験者4名により実施した. 一連の実験では,触覚呈示の効果を確認するため,力覚呈示だけの場合と触覚・力覚同時呈示の場合を比較した.その結果,クリアランスの大きい場合には,触覚呈示を組み合わせても嵌めあい精度の向上は顕著ではなかったが,クリアランスが小さくなるほど嵌めあい精度が向上したことから,触覚呈示の有効性が確認できた.仮想ペグ差しのアルゴリズムでは,穴にペグが食い込むことを許しているため,一度食い込んでしまうと力覚だけの情報では抜け出せないことがわかった.しかし,この状況は実際には生じないために,リハビリ装置として使用するために今後検討を有する. 以上で述べた最終年度の成果とともに,装置設計から実証試験まで実施した三年間にわたる本研究の成果を報告書としてまとめた.
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